高速鉄道は、多くの先進的な都市や国家で、効果的な長距離輸送モードとしての人気を高めつつある。高速鉄道(HSR)は、特化した車両と専用軌道を統合したシステムを採用し、従来の鉄道よりも遥かに高速で運用できる交通機関である。世界的に通用する単一の基準は存在しないが、時速250km(時速160マイル)以上の新規路線と時速200km(時速120マイル)以上の既存路線は一般的に「高速」と見なされ、これに満たない速度であっても、それが交通の大幅な改善につながる地域では、そのような速度も含めるよう定義がやや拡大される。高速鉄道の最初のシステムは1964年に日本で開通した新幹線であり、超特急列車として広く知られた。高速鉄道は通常、設計に大旋回半径を組み入れた立体交差の鉄道用地に敷設された連続溶接レールの標準軌軌道で運行される(Wikipediaを参照)。

インドネシアは、数千の島々からなる人口2億4,000万人以上の島嶼国である。国家経済は年間5%以上成長しており、将来の成長と発展だけでなく、国家の繁栄に向けた国内全土への経済の分配も期待されている。各島の接続は、平等な経済発展を実現するために不可欠である。航空輸送、海上/水上運送、陸上輸送などの輸送モードが国内で発達しており、これらはICT接続などの接続性を維持するために必要である。さらに接続性を高めるため、海道(Sea Toll)がインドネシア群島の主要輸送開発として発表されたこともあった。

これらの接続性を完成させるため、オーストリア、ベルギー、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ロシア、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、トルコ、英国、米国、ウズベキスタンなど、主要都市を結ぶ高速鉄道を開発している多くの国と同様、インドネシアはHSRを1つの選択肢として検討している。唯一HSRが国境をまたいでいるのは欧州である。中国は2016年12月末の時点で、世界全体の3分の2に相当する22,000km(14,000マイル)のHSRを運行している。そして、インドネシアはHSR開発の初期段階にある。スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領の時代に、JICA(国際協力機構)の支援のもとで、国家開発計画庁(国家の計画と開発を管轄する政府機関)、運輸省、技術評価応用庁(技術の研究と具体化を管轄する国家機関)による調査が行われ、実際のHSR開発が開始された。ジャワ島の両端に位置する2都市、ジャカルタとスラバヤの接続性が調査され、ジャワ島のジャカルタとバンドンを接続する可能性についても小規模ながら検討された。

確かに、航空、海上、陸上輸送などのモードによる2都市の接続性は確保されているが、より効果的な接続性を実現して経済成長を加速させるには、別の技術とモードを検討しなければならない。航空輸送の仮想軌道を陸上に展開し、ジャカルタ、バンドン、スラバヤだけにとどまらず、多くの都市を接続するために、HSRの導入を検討することができる。また、接続された都市の方が経済発展の可能性が高くなる。たとえば、ジャカルタ~スラバヤのみを航空輸送で接続するのではなく、ジャカルタ、チカンペック、チルボン/テガル、スマラン、ガムバラン、パダンガン、スラバヤを合理的に短い移動時間でHSRを活用して接続することができる。詳細については、JICAおよびBPPTによって実施された調査の比較として、図1および表1を参照されたい。

日本政府と中国政府により、ジャカルタ~バンドンの全長150kmのHSR接続について同様の調査が実施された。最近の事例を見ると、インドネシア政府は、実施までより長い時間と高いコストがかかるとみられるG2G基盤のファンディングではなく、B2B基盤のファンディングを求めている。よって、インドネシア政府がG2G基盤を提案する日本政府ではなく、B2B基盤の協力を積極的に提案した中国政府に協力を求めたことは、妥当な結果であった。2015年9月、インドネシア政府は、ジャカルタとバンドンを結ぶ150kmの運行速度時速200~250kmのHSRを巡る協力に合意した。プロジェクトは、PT Pilar Sinergi BUMN Indonesia (PT PSBI)が60%、China Railway International(CRI)が40%を所有する合弁会社PT Kereta Cepat Indonesia Cina(PT KCIC)により行われる。このHSRは、ハリム・ペルダナクスマ(ジャカルタ)、チカラン、カラワン、ワリニ、グデバゲ(バンドン)など、いくつかの駅を接続し、カラワンに車両基地を置く。

図1. ジャカルタ~スラバヤ間のHSR

用地取得の問題はあったが、ジャカルタ~バンドンHSRプロジェクトは2016年1月21日の起工式以降、進行中である。

表1. JICAとBPPTの調査によるHSR比較

国内にはHSR開発を巡る賛否両論があるが、システムを理解し、先進的な輸送機関だけでなく、社会経済発展、さらには持続可能性に不可欠と考えられる財務面と安全面との関係を把握する必要がある。インドネシアでHSRのような先進技術を利用して旅客を輸送することは必然的な需要であり、HSRを信頼でき、安全かつ経済的な収益を上げられるモードにすることで持続可能性が保証される。投資、協力、保守にかかる高いコストを埋め合わせなければならず、これは運賃収入、公共サービスの義務、商業など運賃以外の収入から構成される。地方輸送や都市輸送を継ぎ目なく接続することとは別に、HSRを活用するにあたって起こりうるライフスタイルの変化という問題もある。言うまでもなく、公共交通指向型開発(TOD)に関しては、他の公共交通システムと同様、HSRの開発コンセプトが提示された後に議論されることになる。

したがって、HSRがすでに新時代の輸送モードになりつつあるインドネシアにおいて、HSRを根付かせ、期待どおりに国内経済の屋台骨とするには、まだまだ多くのことを学んでいかなければならない。

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