昨今あらゆる分野においてサステナビリティの重要性が増している。新幹線システムは、他の輸送機関と比べてCO²の排出量が非常に少ないことや、エネルギー効率が高いことから環境性能が高いとされている。これら、運行に関わる環境性能に加え、車両をリサイクルする取り組みも進められている。今回は新幹線車両のリサイクルについての事例を紹介する。

JR東海と協力企業は、東海道新幹線の車両に使用されているアルミニウムをリサイクルすることによって、環境負荷の低減に取組んでいる。これまでのアルミニウム製新幹線車両のリサイクルは、アルミニウムに付着した塗装やボルト等の除去が困難なため、鉄を作るときの添加剤等として使用されていた。新幹線車両に使用されていたアルミニウムから付着物を取り除いて、高純度のアルミニウム合金のみを抽出する手法が開発されたことで、アルミニウムのマテリアルリサイクルが実現した。更に、アルミニウムの選別工程を確立することによって、強度が求められる新製車両の車体材料として使用するための信頼性・品質を確保し、新幹線で初めて再生アルミニウム部材を車体の一部に使用することが可能となった。

この「新幹線再生アルミ」は、アルミニウムを新製する場合に比べて、製造時に必要なエネルギーを抑えられるため、車体に使用するアルミニウムを製造する際のCO²排出量を約97%削減し、1編成あたり50トン削減した。

2020年春に引退した東海道新幹線の700系の車体から抽出された「新幹線再生アルミ」は、2020年8月に東京駅八重洲北口にオープンした専門店街「東京ギフトパレット」と周辺のコンコースの柱や天井等の装飾に使用された。この「新幹線再生アルミ」は新幹線車両に使用されていた強度の高いアルミニウムの再生素材のため、装飾だけでなく、建築材料や精密機械にも使用することができる。

また、最新車両であるN700Sでは、廃車となる新幹線車両の車体に使用されたアルミ部材をリサイクルし、内装部品の一部に使用している。他にも、英国の化粧品ブランド「THE BODY SHOP」の店舗の装飾や商品ケースなどの什器として「新幹線再生アルミ」が提供され使用されている。

サステナビリティは人類の普遍的課題であり、各社における環境負荷軽減の取り組みは広がりをみせている。新幹線は単なる輸送手段ではなく、社会に変革をもたらし、人々の生活に大きなインパクトを与えるものである。新幹線はこれからも、限りある資源の有効活用など、環境性能を更に高め続け、人類のサステナブルな発展に貢献していくだろう。

  • 特設サイト「東海道新幹線700系 再生アルミ物語」 ( https://www.tokyoeki-1bangai.co.jp/700aluminum/
    新幹線再生アルミのザボディショップへの提供について (jr-central.co.jp)
    プレスリリース『新幹線から新幹線へ‐アルミ水平リサイクル』 | ハリタ金属株式会社 (harita.co.jp)