新型コロナウィルスの世界的流行によって、人々の移動は厳しく制限され、観光業界や運輸業界にとって試練の時が続いている。特に、様々な都市圏を結ぶ高速鉄道は大きなダメージを受けた。そんな状況下においても、近いうちに感染が収束し、人々が自由に移動できる日が戻ってくることを信じて、今日も高速鉄道は運行を続けている。「明けない夜はない」。今年3月関係者の未来への希望と想いを乗せた特別な新幹線が、光り輝く流れ星となって九州を駆け抜けた。

九州新幹線が全線開業したのは2011年3月12日のことである。奇しくも、日本の関東・東北地方に大きな被害をもたらした東日本大震災の翌日であった。東日本大震災では直接的な被害を受けなかった九州新幹線だったが、2016年4月14日に発生した熊本地震の際は、熊本・新八代間を走行していた回送列車が脱線し、一時は全線運休の状況に追い込まれた。幸いにして、阪神淡路大震災を受けて策定された厳しい耐震基準により、主要構造物には大きな被害が出ず、また他の鉄道関係者が一致団結して復旧工事を行ったことにより、当初の想定よりも短い期間で運転を再開することができた。

多くの困難を乗り越えて、2021年3月に無事九州新幹線は開業10周年を迎えた。開業10周年を記念するとともに、東日本大震災で被害に遭われた方々の追悼、そしてコロナウィルスの収束を祈願し、JR九州は一日だけの特別な新幹線を走らせることを決定した。

特別なラッピングが施されたこの列車には乗客はおらず、代わりに車内外へ全国から集まった計8,350点の中から選ばれた777点の「願い」が掲出された。多くの「願い」を乗せた新幹線は、進行方向左側の全ての窓から7色の光を放ちながら、目的地の博多駅に向けて鹿児島中央駅を出発。途中の筑後広域公園ではビューイングイベントが開催され、一時停車した新幹線の車窓からは音楽と合わせてサーチライトが放たれ、夜空には花火もあがった。
 
未来への想いが詰まった「流れ星新幹線」の映像はこちらからご確認ください。
 ※動画のリンク
<https://www.youtube.com/watch?v=2002jGlh7yU>

 「流れ星新幹線」は一日限定のイベントであったが、多くの人に勇気と希望を与えた。一日でも早くかつての日常が戻ることを願いながら、今日も新幹線は走り続ける。