「7分間の奇跡」という言葉をご存知だろうか。これは高速鉄道の運行を裏で支える「ある作業」を称えた言葉である。

「7分間の奇跡」とは、日本の新幹線の清掃作業を称えた言葉の一つである。その効率的かつ洗練された丁寧な作業は、日本国内はもとより、BBCやCNNをはじめとした国際メディアが取材している。米ハーバード大学では、モチベーション高く清掃業務に臨む従業員たちの姿から、組織マネージメントを題材とした授業の教材として取り上げるなど、国内外で高く評価され、注目を集めている。

新幹線の清掃を担う会社の一つ、JR東日本テクノハートTESSEIは、新幹線がターミナルに到着した際の折り返し清掃をわずか7分で対応する。清掃するJR東日本の新幹線は最大17両編成、座席数は各編成約1,000席ある。高頻度・定時性を誇る新幹線は、清掃スタッフもその品質を保つ重要な担い手である。時間内に完璧な清掃を施して次の営業運転に備える、彼らの仕事はまさにプロフェッショナルである。
スタッフの業務は列車入線時から既に始まっている。列車が到着すると、ホームに美しく整列したスタッフは一礼を以て列車・乗客を迎える。降車する乗客に対し「ありがとうございました」と声をかけながら、乗客が手に持っているごみなどを手際よく回収していく。そのホスピタリティは、清掃というより、接客と称した方がふさわしいかもしれない。

乗客が降車すると、彼らの本領発揮である。与えられた時間はわずか7分。スタッフ1人あたり一両(約100席)を担当し、加えてトイレ洗面台等の清掃もこなす。折り返し運転用に座席の向きを転換しつつ、テーブルや座席の汚れを確認し、一つ一つ拭き取りをしていく。無駄のない、流れるような動きで清掃をこなしたのち、スタッフはホームに出て一列に並び、乗車を待っていた旅客に対し一礼をして清掃が終了したことを告げる。列車の到着から清掃終了まで、まさに7分間の奇跡だ。

新幹線の車内は飛行機と同様、自動制御で常時換気をしており、車内の空気は約6分に一回、外の新鮮な空気と入れ替わっている。長時間乗車しても空気がこもることはない。新型コロナウィルスの流行以降は、清掃スタッフに加え、車内を巡回する車掌も、乗客がよく利用するドアノブや洗面台などの除菌作業を行うことで、台湾でも日本でも、これまで新幹線をご利用されたことに起因する感染は確認されていない。

限られた時間の中でも、妥協を許さないスタッフの仕事が、新幹線の定時運行を守りつつ、乗客が安心して利用できる乗り物にしている。彼らは今日も誇りを胸に、新幹線の安全・安定輸送を支えている。