
世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスは、人々の生活や経済に大きな影響を与えている。各国で感染防止対策の一環として外出の自粛が行われ、人々の行動や移動は大きく制限された。しかしこのような状況でも、電車などの公共交通機関は、多くの国において最低限の都市機能維持という使命を果たすべく、運行が継続された。高速鉄道も、多くの国で様々な対策や工夫をしながら運行を継続し、国家の基幹インフラとしての使命を果たしている。
日本の高速鉄道、新幹線も例外ではない。日本では、4月より外出自粛等の活動制限が呼びかけられたが、新幹線は医療従事者やエッセンシャルワーカーの足として、全国3万kmに及ぶ7路線すべてで運行が継続された。日本の新幹線システムは、そもそも車両自体が非常に優れた換気性能を有しており、高速で走りながら6~8分に一回換気しているので、長距離の移動でも車内における感染拡大リスクは低い構造となっている。また、日本の新幹線では乗客と従業員双方の安全を守るため、コロナ対策としてソフト面での対応にも力を入れている。従業員はマスクを着用し、車内では時差通勤の呼びかけや咳エチケットの協力など定期的な注意喚起放送をするほか、次亜塩素酸ナトリウムを使ったドアノブや洗面台など、乗客が多く使う設備における徹底的な除菌と清掃を実施している。このような対策が功を奏し、日本ではこれまで新幹線におけるクラスター感染を起きていない。
日本の新幹線システムは台湾でも利用されている。全長約350kmの台湾新幹線は、台湾の人口の90%が集中する台北・台中・高雄等の主要都市を90分で結び、2007年の運行開始以来、台湾の経済・社会活動を支えている。今年1月には旅客人員が累計で6億人を突破し、台湾新幹線はまさに国家の基幹インフラとして活躍している。
台湾はコロナの封じ込めに成功していることで世界から注目を浴びているところが、コロナ禍にあっても基幹インフラである高速鉄道の運行を止めることはなかった。新幹線を運行する台湾高鉄は、3月には春季休暇期間の混雑緩和と乗客同士のソーシャルディスタンスを保つため、自由席の販売を停止。自由席料金で指定席を販売することで、乗客同士が距離を置いて座れるよう対策を実施。またその後の欧州での感染拡大により、国外から多くの台湾人が帰国した4月からは、全乗客向けに駅での検温を開始したほか、感染予防のため駅弁やコーヒー、新聞等の駅・車内での販売を停止。ターミナル駅到着後は、列車の徹底した除菌と清掃を行うなど、積極的な感染予防対策を実施してきた。台湾高鉄の江董事長(IHRA上席顧問委員)は社員に対するコメントにおいて、現下の困難な状況にあっても、社員があらゆるリスクを認識し、責任ある行動をとることで、パンデミック下でも高速鉄道が国の基幹インフラとして、その社会的使命を果たすことに期待を寄せた。台湾新幹線の強みは、こうした高いモラルと使命感にも裏付けされている。
高速鉄道は多くの国において、人々の生活や経済、社会を支える基幹インフラとして活躍している。移動が制限される現下の状況にあっても、高速鉄道は可能な限りの対策を施すことで、基幹インフラとしての使命を果たし続ける。

